はじめに
治験は新薬開発の過程で欠かせない要素であり、被験者の皆様の協力なしには実現できません。本日は、被験者募集会社(PRO)の役割と重要性、さらには臨床試験におけるPROの活用について解説していきます。
PRO(被験者募集会社)の役割
PRO(Patient Recruitment Organization)とは、製薬会社やCROから治験・臨床試験の被験者募集の委託を受ける会社のことです。PRO各社が保有する被験者データベースや得意分野は異なりますが、被験者不足の解消や適切な被験者の確保など、様々な課題に対応できます。
被験者データベースの活用
PRO企業は、自社の被験者データベースを活用して効率的な募集を行います。地域別のデータベースを所有していることが多く、臨床試験の進捗状況に合わせて柔軟に対応できるのが強みです。
例えば、ある地域で被験者募集に遅れが生じた場合、その地域のPROに依頼することで迅速に被験者を確保できます。PRO企業は地元に精通しているため、より的確なアプローチが可能になります。
募集プロセスの流れ
通常、PRO企業への依頼から被験者紹介までの流れは以下のようになります。
- 製薬会社やCRO、SMOからPROへ被験者募集の依頼
- PRO企業による公募の開始(web広告、新聞広告など)
- 被験者の電話予約対応
- 被験者の来院対応、またはCRC(治験施設)への紹介
PRO企業は自社のノウハウを活かしてスピーディかつローコストな被験者募集を実現し、臨床試験の円滑な遂行をサポートします。
PRO協会による活動
日本PRO協会は、PRO事業者の自主的なガイドラインの策定や情報提供の適正化、治験への安心感の醸成など、様々な活動を行っています。協会加盟企業は、被験者増加や新薬開発の推進に向けて互いに協力し合うことが期待されています。
協会の正会員となるPRO事業者は、自主ガイドラインの遵守や個人情報の適切な取り扱い、イメージアップ活動の実施などが求められます。PRO協会への加盟は、PRO事業者にとって多くのメリットがあります。
臨床試験におけるPROの活用
近年、患者中心の医療が重視される中で、PRO(Patient Reported Outcome)の活用が注目されています。PRO尺度を用いることで、患者の主観的な症状をより詳細に捉えられるようになりました。
代表的なPRO尺度
PRO尺度には様々な種類があり、疾患領域や目的に応じて適切な尺度が選択されます。以下に代表例をいくつか挙げます。
- Brief Pain Inventory – Short form (BPI-SF):がん領域の痛みの評価に使用
- Patient Neurotoxicity Questionnaire (PNQ):化学療法に伴う末梢神経障害の評価に使用
- Patient-Reported Outcomes version of Common Terminology Criteria for Adverse Events (PRO-CTCAE):有害事象の評価に使用
- SF-36、EORTC-QLQ C30、FACT-G:包括的な健康関連QOL尺度
これらの尺度は適切な翻訳プロセスを経て、各国語版が作成されています。多国籍の臨床試験では、ローカライズ版の言語検証が重要になります。
PRO尺度の開発・翻訳プロセス
新規PRO尺度の開発や、既存尺度の修正・適合作業を行う際は、専門のサポートチームが関与することがあります。RWSのようなエキスパートチームが、COA/PROの選択・開発から最終化までのプロセスを誘導してくれます。
また、多国籍の臨床試験に備えて、PRO尺度のローカライズ版を作成する必要があります。この言語検証プロセスは複雑で厳密であり、RWSのようなエキスパートが正確な翻訳を実現します。これにより、タイムリーな申請が可能になり、新薬の早期上市につながります。
ePROによる収集と活用
PRO収集の効率化と精度向上を目的として、ePRO(電子PRO)の活用が進んでいます。NTTコミュニケーションズが提供する「SmartPRO®」は、被験者や患者がスマートフォンからPROを回答・収集できるePROシステムです。
リマインド機能やアラート機能により、タイムリーかつ信頼性の高いPROの収集が可能になります。さらに、収集データをヘルスケアサービスに活用することで、新たな価値創出も期待できます。
まとめ
被験者募集会社(PRO)は、被験者確保という課題に対して重要な役割を果たしています。また、PRO尺度の活用により、患者の主観的な症状を詳細に捉えられるようになり、患者中心の医療の実現に貢献しています。
今後も、PRO企業やPRO協会、PRO尺度開発企業など、さまざまな関係者が連携することで、新薬開発のさらなる効率化と、よりよい医療の実現が期待できます。
よくある質問
PRO企業とはどのような会社ですか?
PRO(Patient Recruitment Organization)とは、製薬会社やCROから治験・臨床試験の被験者募集の委託を受ける会社のことです。PRO企業は、自社の被験者データベースを活用して効率的な募集を行い、被験者不足の解消や適切な被験者の確保など、様々な課題に対応できます。
PRO協会はどのような活動をしていますか?
日本PRO協会は、PRO事業者の自主的なガイドラインの策定や情報提供の適正化、治験への安心感の醸成など、様々な活動を行っています。協会加盟企業は、被験者増加や新薬開発の推進に向けて互いに協力し合うことが期待されています。
PRO尺度とはどのようなものですか?
PRO尺度には様々な種類があり、疾患領域や目的に応じて適切な尺度が選択されます。代表的なPRO尺度には、がんの痛みの評価や化学療法に伴う末梢神経障害の評価、有害事象の評価、健康関連QOLの評価などがあります。
ePROとはどのようなシステムですか?
ePRO(電子PRO)の活用が進んでいます。NTTコミュニケーションズが提供する「SmartPRO®」は、被験者や患者がスマートフォンからPROを回答・収集できるePROシステムです。リマインド機能やアラート機能により、タイムリーかつ信頼性の高いPROの収集が可能になります。
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