はじめに
患者調査は、国民の健康状態や医療需要を把握するための重要な調査です。厚生労働省が3年に1度実施するこの大規模な調査は、病院や診療所の入院・外来患者の実態を明らかにし、貴重なデータを提供しています。本日は、患者調査の方法や活用事例について、詳しく解説していきます。
患者調査の概要
患者調査は、国民の疾病状況や受療行動を把握するための基幹統計調査です。この調査結果は、医療政策の企画立案や医療資源の適正配置など、様々な観点から活用されています。
目的と意義
患者調査の主な目的は、以下の3点です。
- 国民の疾病構造や受療状況を把握する
- 地域別の患者数や医療需要を推計する
- 医療施設の利用状況を明らかにする
こうした調査結果から、国民の健康増進や適切な医療提供体制の構築に向けた基礎資料が得られるため、患者調査は極めて重要な意義を持っています。
調査内容
患者調査では、以下のような項目について詳細なデータが収集されます。
- 患者の年齢・性別・住所地
- 入院・外来の別、入院日数
- 主傷病名、診療費支払方法
- 入院前の場所、退院後の行き先
このように、患者の属性や受診状況、傷病の種類など、多岐にわたる情報が網羅的に把握されています。
患者調査の方法
患者調査は、全国の医療機関を対象に大規模な実地調査が行われます。調査の具体的な手順は以下の通りです。
対象施設の抽出
患者調査の対象となる医療施設は、無作為抽出により決定されます。全国の病院、一般診療所、歯科診療所から一定数の施設が抽出され、その施設を利用した患者が調査の対象となります。
施設種別 | 令和2年調査の対象施設数 |
---|---|
病院 | 6,284施設 |
一般診療所 | 5,868施設 |
歯科診療所 | 1,277施設 |
このように、施設種別ごとに一定数の医療機関が無作為に選ばれ、その施設の患者が調査対象となります。
調査票の配布・回収
調査対象施設には、調査票が配布されます。施設側は、指定された期間中に受診した全ての患者について、調査票に必要事項を記入します。記入済みの調査票は、厚生労働省に集められ、集計・分析が行われます。
調査票の配布・回収は、従来は郵送方式が主流でしたが、近年ではオンライン調査も導入されるようになりました。このことで、調査の効率化と負担軽減が図られています。
調査時期と周期
患者調査は、3年に1度の周期で実施されています。調査時期は、病院が10月の特定の3日間のうち1日、診療所が10月の特定の3日間のうち1日に設定されています。
この調査時期は、季節的な偏りを避けるために設定されたものです。また、3年に1度の周期は、疾病構造の変化や医療需要の推移を把握するのに適切な間隔とされています。
患者調査の活用例
患者調査から得られる詳細なデータは、様々な分野で活用されています。ここでは、その具体例をいくつか紹介します。
医療計画の策定
患者調査の結果から、地域別の患者数や疾病構造が明らかになります。こうした情報は、都道府県が策定する「地域医療構想」や「がん対策推進計画」など、様々な医療計画の基礎資料として活用されています。
例えば、高齢化に伴う医療需要の増加が見込まれる地域では、療養病床の確保や在宅医療の充実を図る必要があります。患者調査のデータを基に、そうした施策を立案することができるのです。
企業の経営戦略
患者調査のデータは、企業の経営戦略の立案にも役立っています。例えば、医療機器メーカーは、地域別の患者数や疾病構造を分析することで、販売が見込める商品と営業先を特定できます。
また、高齢化が進む地域では、介護用品や福祉機器の需要が高まることが予想されます。患者調査のデータを活用して、そうした地域をターゲットにした営業活動を行えば、売上の増加が期待できます。
学術研究
患者調査のデータは、医療分野の学術研究でも活用されています。例えば、疾病の発症率や罹患率、医療費の推移など、様々な指標を年次推移で分析することができます。
こうした分析結果は、疾病の予防対策や医療費適正化に向けた施策の立案に生かされています。また、医療関連データの二次利用が進む中で、患者調査のデータは重要な研究資源として位置づけられています。
まとめ
患者調査は、我が国の医療政策や医療提供体制の根幹を支える、極めて重要な調査です。本稿では、患者調査の概要、調査方法、活用事例などについて解説してきました。
調査結果から得られるデータは、地域医療計画や企業の経営戦略、学術研究など、様々な場面で活用されています。医療ニーズを的確に捉えるためには、患者調査のデータが欠かせません。
今後も、患者調査が継続して実施され、国民の健康増進と適切な医療提供体制の実現に寄与することが期待されています。
よくある質問
患者調査とはどのような調査ですか?
患者調査は、国民の疾病状況や受療行動を把握するための基幹統計調査です。この調査結果は、医療政策の企画立案や医療資源の適正配置など、様々な観点から活用されています。
患者調査の方法はどのようになっていますか?
患者調査は、全国の医療機関を対象に大規模な実地調査が行われます。対象施設は無作為抽出され、その施設を利用した患者が調査の対象となります。調査票の配布・回収はオンラインを含む方式で行われ、3年に1度の周期で実施されています。
患者調査のデータはどのように活用されていますか?
患者調査のデータは、医療計画の策定や企業の経営戦略の立案、学術研究など、様々な分野で活用されています。地域別の患者数や疾病構造の把握、医療需要の推計、指標の年次推移分析など、幅広い用途があります。
患者調査はなぜ重要なのですか?
患者調査は、国民の健康増進と適切な医療提供体制の実現に寄与する極めて重要な調査です。調査結果から得られるデータは、医療政策の企画立案や医療資源の適正配置などに欠かせない基礎資料となっています。
コメント