はじめに
ビジネスの本質は利益を生み出すことにあります。しかし、利益を生み出す方法は一つとは限りません。様々な戦略やアプローチがあり、企業はそれらを組み合わせて自社に適したビジネスモデルを構築する必要があります。本書『ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか』では、利益創出の23のパターンが小説形式で紹介されています。この記事では、その中から代表的な6つのパターンを取り上げ、詳しく解説していきます。
顧客中心のアプローチ
利益を生み出すための第一歩は、顧客ニーズを理解し、それに応えることです。顧客志向のビジネスモデルでは、顧客の要求に合わせて製品やサービスをカスタマイズしたり、適切な価格設定を行ったりすることが重視されます。
カスタマイズ
顧客一人ひとりの好みや要望に合わせて製品やサービスを調整することで、高い顧客満足度を実現できます。カスタマイズによって付加価値が高まれば、適正な価格設定が可能になり、利益率の向上につながります。
例えば、パソコンメーカーがカスタムオーダーに対応することで、顧客の希望するスペックの機種を提供できます。また、アパレルメーカーがサイズオーダーに対応すれば、より多くの顧客のニーズに合った製品を提供できるでしょう。
価格帯の設定
製品やサービスに適切な価格帯を設定することも重要です。高価格帯と低価格帯の両方をラインナップに用意し、顧客の購買力に合わせて選択できるようにすると良いでしょう。
例えば、自動車メーカーが高級車からコンパクトカーまで幅広い価格帯の車種を用意していれば、より多くの顧客層をカバーできます。また、飲食店がランチとディナーで異なる価格設定をすれば、ビジネスパーソンから家族連れまで幅広い顧客を獲得できるでしょう。
マルチチャネル戦略
顧客へのアプローチ方法を複数用意し、販売チャネルを増やすことも有効な戦略です。店舗販売に加えてECサイトでの販売、カタログ販売、テレビショッピングなど、顧客が好む購入方法に合わせて対応することが大切です。
例えば、書店がリアル店舗に加えてオンラインショップを開設すれば、来店できない遠方の顧客からも収益を得られます。また、スポーツ用品メーカーがECとカタログの両方で販売すれば、より多くのチャネルを通じて商品を販売できるでしょう。
付加価値の追求
顧客に対して付加価値を提供することも、利益を生み出す上で重要なアプローチです。関連する製品やサービスをバンドルして販売したり、アフターサービスを手厚く行ったりすることで、顧客の支持を獲得し、収益につなげることができます。
関連製品のパッケージ化
主力製品に関連する製品やサービスをセットにして販売することで、顧客に対する価値提案を高めることができます。これにより、顧客満足度が向上するだけでなく、売上と利益の拡大も期待できます。
例えば、パソコンメーカーがノートPCにソフトウェア、バッグ、マウスなどの周辺機器をセットで販売すれば、顧客の手間を省くことができます。また、旅行代理店が航空券、ホテル、レンタカーをパッケージ化すれば、顧客に手厚いサービスを提供できるでしょう。
新製品の先行投入
新製品を早期に投入し、それに関連する製品やサービスを組み合わせて販売することも有効な戦略です。新製品へのエarly アダプターは、関連製品やサービスへのニーズも高いはずです。
例えば、スマートフォンメーカーが新型スマートフォンの発売に先立ち、ケースやフィルム、充電器などのアクセサリー製品を先行販売すれば、新製品の需要を取り込めるでしょう。また、ゲームメーカーが新作ゲームソフトの発売に合わせてゲーム機の新型モデルを投入すれば、相乗効果が期待できます。
アフターサービスの提供
製品の販売後も、手厚いアフターサービスを提供することで顧客満足度を高め、リピート率を上げることができます。これにより、長期的な収益の確保が可能になります。
例えば、自動車メーカーが無料の定期点検サービスを提供したり、家電メーカーが長期間の無償修理サポートを行ったりすれば、顧客の信頼を得られるでしょう。また、ソフトウェアベンダーが優待サポートサービスを提供すれば、顧客は安心して製品を利用し続けられます。
差別化と専門性
競合他社との差別化を図り、特定の領域で専門性を高めることも、利益を生み出す上で重要なポイントです。大ヒット製品を生み出したり、既存技術を新しい分野に活用したりすることで、独自の付加価値を創出できます。
大ヒット製品の開発
ゲームチェンジングな画期的製品を開発し、市場をリードすることが企業の大きな武器になります。大ヒット製品であれば、少しの価格プレミアムが付けられても、顧客は喜んで購入してくれるでしょう。
例えば、Appleの iPhoneや Amazonの Kindleのように、新しいカテゴリーを切り開いた製品は大ヒットを記録し、メーカーに高い利益をもたらしました。あるいは、ゲームソフトでも夥しい数のヒットタイトルが生み出されており、そこから多額の収益が得られています。
既存技術の再利用
既存の技術やノウハウを新しい分野に活用することも、差別化のための有力な戦略です。コア技術を応用したり、異業種との協業を行ったりすることで、新たな付加価値を生み出せます。
例えば、電気自動車メーカーが車載用バッテリーの技術を家庭用蓄電池に転用したり、化粧品メーカーが食品素材の加工技術を応用して化粧品素材を開発したりすることで、新規事業の立ち上げが可能になります。
専門性の追求
特定の製品やサービスに特化し、圧倒的な専門性を高めることで、差別化を果たせます。高度な技術力や卓越したサービス品質により、他社が簡単には真似できない競争優位が得られるでしょう。
例えば、工作機械メーカーが特定の加工分野に特化して技術を磨けば、その分野での最高品質を実現できます。また、コンサルティング会社が特定の業界に絞って人材育成とノウハウの蓄積を行えば、確かな専門性を身に付けられるはずです。
効率性の追求
コストを削減し、効率を高めることも利益を生み出すための重要な方策です。経営全般にわたる徹底した効率化はもちろん、販売活動の地域集中や大口取引の確保なども利益率の向上につながります。
経営の効率化
企業活動のあらゆる側面で無駄を排除し、生産性を高めることが不可欠です。業務プロセスの見直しや最新技術の活用、アウトソーシングの利用などによって、コスト削減と効率化を推進することが重要です。
例えば、製造業ではIoTやAI、ロボティクスなどの活用によって生産工程を自動化・無人化することで省力化を図れます。また、間接部門の業務プロセスをBPRやRPAで見直すことで、コストダウンにつながるでしょう。
地域集中出店
販売エリアを特定の地域に絞り込むことで、効率的な販促活動が可能になります。地域密着型のマーケティングにより、リーチの最大化とコスト削減を両立できます。
例えば、フード フランチャイズ企業が首都圏に店舗を集中させれば、広告宣伝費の効率化が図れます。また、ホームセンターが北海道・東北地方に特化すれば、顧客ニーズに合わせた商品調達と販売が可能になるでしょう。
大口取引の確保
大口の取引先を確保することで、継続的な売上が期待でき、スケールメリットを活かせます。また、長期的かつ安定的な取引関係の構築により、リスクヘッジにもつながります。
例えば、食品卸売業者が大手スーパーと長期的な取引を行えば、安定した収益が見込めます。あるいは、OA機器メーカーが企業向けの大口販売に注力すれば、小売り向けよりも利益率が高くなるでしょう。
バリューチェーンの支配
自社のバリューチェーン全体を支配下に置くことで、競争力を高め、利益を最大化することができます。さらに、景気変動にも強いビジネスモデルを構築できます。
バリューチェーンの統合
原材料の調達から製造、物流、販売に至るバリューチェーン全体をコントロールすることで、コスト競争力の向上と高い利益率の実現が可能になります。垂直統合を推し進めることが有効な戦略です。
例えば、自動車メーカーが部品メーカーを買収し、部品の内製化を進めれば、コストダウンにつながります。また、アパレルメーカーが自社の縫製工場や物流拠点を持てば、高い品質管理と効率的な物流が実現できるでしょう。
景気変動への対応
景気の変動に左右されにくいビジネスモデルを構築することも重要です。需要の変動が少ない分野に注力したり、デフレ対応の戦略を講じたりすることで、利益の安定的な確保が期待できます。
例えば、食品や生活必需品の分野に注力すれば、不況に強い事業が展開できます。また、デフレ時代に合わせて、小ロットで高回転の販売スタイルに転換すれば、在庫リスクの低減とキャッシュフローの改善が図れるでしょう。
新製品のタイミング
新製品の投入タイミングを的確に捉えることが、成功のカギを握ります。景気の山と谷を読み取り、需要の高まりが見込まれる時期に合わせて新製品投入を行うことが賢明です。
例えば、オーディオメーカーが景気回復期に新製品を投入すれば、富裕層の買い替え需要を取り込めるでしょう。また、自動車メーカーが低成長期に投入すれば、買い控え需要の取り込みが可能になります。適切なタイミングを捉えることが大切です。
まとめ
ここまで、利益を生み出すための6つの代表的なアプローチについて、具体例を交えながら解説してきました。顧客中心、付加価値の追求、差別化と専門性、効率性の追求、バリューチェーンの支配など、様々な側面から利益創出を図る必要があること がわかります。
企業は自社のビジネスモデルに合わせてこれらのアプローチを組み合わせ、長期的な利益の最大化を目指す必要があります。一つひとつのアプローチを着実に実行し、ビジネスモデル全体の最適化に努めることが肝心です。本書が紹介する23のパターンは、その参考になるでしょう。ぜひ御一読いただき、ヒントを得て、自社のビジネスにお役立てください。
よくある質問
どのようにして顧客中心のアプローチを実践すればよいでしょうか?
顧客の要求に合わせて製品やサービスをカスタマイズすることや、適切な価格設定を行うことが重視されます。これにより、高い顧客満足度を実現でき、付加価値が高まることで適正な価格設定が可能になります。
差別化と専門性をどのように追求すればよいでしょうか?
大ヒット製品の開発や既存技術の新分野への応用、特定の製品やサービスに特化して圧倒的な専門性を高めることで、他社が簡単には真似できない競争優位を得られます。
効率性の追求にはどのような方策がありますか?
経営全般にわたる無駄の排除や生産性の向上、販売エリアの集中、大口取引の確保などが重要です。様々な取り組みを組み合わせることで、コスト削減と効率化を推進できます。
バリューチェーンの支配は利益を最大化する上でどのような効果がありますか?
バリューチェーン全体をコントロールすることで、コスト競争力の向上と高い利益率の実現が可能になります。また、景気変動にも強いビジネスモデルを構築できます。
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